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名古屋高等裁判所 昭和57年(行コ)4号 判決

控訴人(原告) 中村末広

被控訴人(被告) 名古屋法務局瀬戸出張所登記官

訴訟代理人 服部勝彦 佐野幹夫 外五名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は「原判決を取り消す。本件を名古屋地方裁判所に差し戻す。」との判決を求め、被控訴人は、主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述及び証拠関係は、原判決事実摘示のとおりであるから、ここにこれを引用する。

理由

当裁判所は、原判決書七枚目表四行目中「判断する。」の下に「処分の取消しの訴えの対象となる行政庁の処分とは、それによつて国民の権利義務を形成し、あるいはその範囲を確定することが法律上認められているものでなければならない(最高裁判所昭和二八年(オ)第一三六二号昭和三〇年二月二四日第一小法廷判決最高裁判所民事判例集九巻二号二一七頁、同裁判所昭和三七年(オ)第九一四号昭和三九年一月二四日第二小法廷判決同民事判例集一八巻一号一一三頁参照)ところ、登記者が不動産登記簿に所定の事項を記載する登記行為は、行政行為のうちの公証行為に属し、特定の事実又は法律関係の存否を公に証明するもので、これを本件についていうと、地目を農地として表示することは、当該土地が農地であることを一般的に証明する効力を有するものであるが、ある土地が農地であるかどうかは、登記薄上の地目の記載とはかかわりがなく、当該土地の客観的現況によつて決すべきものであるから、登記簿上の地目の表示は、これにより直接国民の権利義務を形成し、あるいはその範囲を明確にする性質を有するものではない。以下これを詳説する。」を加えるほか、原判決と同じ理由で、本件各処分の取消しを求める控訴人の本件訴えは不適法であつて、その欠缺は補正することができないものであるから、これが却下を免れないものと判断するので、ここに原判決の理由を引用する。

したがつて、本件訴えを却下した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がない。

よつて、本件控訴を棄却し、控訴費用は敗訴の当事者である控訴人に負担させることとして、主文のように判決する。

(裁判官 舘忠彦 名越昭彦 木原幹郎)

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